Digital Wonderland

2002-07-17
およそオーディオであれヴィジュアルであれ、記録媒体や、その伝送系であれば、必ず「アナログかディジタルか」というのが現代では話題になるようですね。
こと映像(それもヴィデオ)に関して言えば、もうディジタルがなんの抵抗も無く受け入れられています。ヴィデオの画質について、「俺は絶対アナログ派だね。デジタルの画像には暖かみが無いからダメだ!」なんて行ってるヤツってのは(もしかしたらいるのかもしれないけど)聞いたコトが無いでしょ?
ま、本来ヴィデオってのが、走査線の集積によるものだから「そもそも、画質を云々できるようなシロモノではない」という、映像関係者の「常識」から始まり、銀塩フィルムによる「映画製作」とはまったく無縁のところで発展を遂げて来たおかげで、ハイ・ヴィジョンのクォリティが映画製作者の前にいきなり登場した時に、逆に抵抗感なく(さらに CG による SFX との相性の良さもあって)映画業界に浸透していったものと思われます。

もちろん、映像のプロたる映画人の中には、当然ラティチュードの狭い銀塩フィルムでなければ表現できない世界がある、として背を向ける層もあるようですが(もっとも、ディジタル界としては、それは「処理」の問題であり、ラティチュードや忠実性、さらに解像度などを「低下」させる事は容易である、と言う反論もあるようですが)。
と、一応、一部を除いて、こと映像についてはデジタル処理が、制作者再度での利便性やコスト、またエンド・ユーザーの時点での「画質」や、記録としての保持耐性、転送・複写による損耗耐性など、かなりの範囲で「圧倒的優位」をキープしつつあるようです。

さて、問題はオーディオですね。いまだに CDは「音痴」を作る、とか、音はアナログの方がいい、とか言う話題がむし返されてます。
ただ、「音痴」の件は、実験の結果「 CDでは正確な音高が聴きとれない」という論者の主張が、その提唱者だけの現象だった事が判明して、おおいに失笑を買いました(逆に、あまりに耳が良すぎてサンプリング周波数が聴こえてしまい、そっちに気をとられてたのかも!人間ワザじゃない!)。
さて、もうひとつの問題ですが、そのためには「音がいい」とはどうゆう事なのか、その定義に立ち帰る必要があります。

とりあえず「音」の記録という事で考えれば、「何も足さない」、「何も引かない」、「タイムを変えない」、「周波数成分を変えない」、というのが伝送系、記録系にとっての「いい音」のハズです。
しかし、オーディオ・マニアやギタリストが言う「やはり球のアンプはあたたかい、いい音がする」というのは「なんなのか?」。
つまりある種の変調を「快い」と感じているのではないのか?
変調は高調波歪みや低調波歪みの存在ではないのか?
あるいは周波数成分のバランスの崩れではないのか?
また、アナログ・ディスク(つまり「レコード」やね)プレイヤーはモーターの回転にタイムを依存している以上、正確な再生速度が得られないのなら「絶対音感の生成」を阻害しているのではないのか?

「音がいい」ってのはどうゆうことなのでしょうか?耳に快いのが「いい音」?それとも原音に近いのが「いい音」?
アナログ派の人は CD の音をスカスカだ、とか嘘くさいとか言いますよね。
では、たった¥6,000の CD プレーヤーにつないだヘッドフォーンで聴く CD の音に匹敵する音質を、アナログで出そうとしたらいくら掛かるでしょう?
アナログ・ディスクの音溝に込められた全情報を完全に引き出す、と言われるプレーヤーだけですでに¥2,000,000近い価格です。
CD ではサンプリング周波数の限界で、たしかに正確には「何も引かない」とは言えないのですが、いくら高価なプレーヤーを使ったとしても、「何も足さない」ためには無塵室が必要です。
アナログ・ディスクを¥2,000,000 のレーザー・トレーシング・プレイヤーで再生した音と、¥6,000の CDプレーヤーで再生した音が「比較の対象となりうる」という時点で、これは「どちらの音がいいか」の問題ではなく、「音楽をなんだと思っているのか」の問題なのだ、という事がお判りいただけるでしょう。

極論すれば¥2,000,000マイナス¥6,000、つまり¥1,994,000あれば、どれだけ CD が揃えられるか?あるいはどれだけ「生演奏に触れられるか?」という事なのですよ。
あ、大事なコトですが、そのアナログ・ディスクのすべてを余さず再生する、という¥2,000,000近いプレーヤーですが、レーザーを使っている以上、内部ではおそらくディジタル処理でしょうね。
permalink No.95

Search Form