Memphis Soul Stew

King Curtis


2004-12-07 TUE.


え?Memphis Soul Stew?それってもう採り上げてたんじゃなかったっけ?っていうアナタ。そのとーりざます。
昨年 9月13日9月13日にやっておりますよん。
しか〜し、ここで採り上げてるのはそのシングルをリリースした 4 年後に San Francisco の Fillmore West で行ったライヴからの録音なのですよ。
2003/9/13 の日記ではこの曲が Sly & the Family Stone の Dance to the Musicに与えたかもしれない影響について書きましたが、ここでは逆に King Curtis(あるいはプロデューサーかも?)が、およそ彼に遅れること 10 年、出生地 Fort Worth からさほど遠くない Texas 州 Denton で生まれた Sylvester Stewart、つまり Sly が世に送りだしたそれ以降の作品などから「逆に受けたかもしれない影響」も見えるよな気がいたしますが、ま、そこら本人にインタビューでもしなきゃ判るワケはありませんね。

前回も述べましたとおり、このライヴの半年後になる 8 月13日、New York で、自宅に帰るためマンハッタンを歩いていた彼は暴漢に襲われ、刺殺されてしまうのですが、その直前みたいな時期のこの音が残っており、それをこうして聴くことが出来るのですから、Atlantic にはカンシャしなくっちゃね。

さて、なんで、そもそも、ウエスト・コーストのヒッピーどものメッカみたいな Fillmore West なんぞで?っちゅーギモンをお持ちの方もいるかもしれませんが、ま、知ってるひとは知っている、てな事情がございまして、実は、彼は、ここ Fillmore West でのライヴ・レコーディングをする Aretha Franklin のバッキングであるとともに、タワー・オヴ・パワーに続くセカンダリィ・オープニング・アクトを務めておったのでございますよ。
Atlantic が最初っから King Curtis もレコーディング・スケジュールに含めていたのか、あるいは Aretha のための機材チェックやリハーサルも兼ねてテープを回していたのか?はさだかではございません。
「出来が良かったらプレスするかもしんないから一応、録っとけ」くらいのとこがホントだったのかもしれませんが、ま、これはワタクシの想像でございますによって、本気になさいませんよう。

さて、オリジナルよりはほんのちょっとテンポ・アップして始まる、今夜の当店のスペシャル「シェッフのおススメ」は、ベースこそ( Jerry Jemmott )スタジオ版とさほど変わらないものの、まさに衝撃的と言っていいほどパワー・アップされてるのが続く Bernard Purdie(!)の Fat Back Drums!これがスゴい!メチャメチャ凄い!つくづく sugoi!(あ、カンケーないけど、確かカナダのバイク関係メーカーで SUGOI ってのがホントにあるんですが、その語源は「凄い」っていう日本語だとか。って、これ判ってくれるの、みっくおかさんくらいかな?)さすが Steely Dan の Aja でスティーヴ君と五分張ってるバーナード・パーディ!まさに 1970 年代の最先端リズムでございます。
ま、それだけに、スラッピングくらいやってほしかった(あるいは地味ぃ~にやってるのかもしれないけど、そーは聞こえない。か?)ベースのオールド・スクールぶりがちょっと歯がゆい気もいたしますが、あるいはこのベース・パターンがこの曲の「アイデンティティ」だ、っつーことなのかな?パターンは踏襲しても、スラッピングでアクセントつける、っつー手はあったと思うんですがねえ。
そこら King Curtis 自身と Atlantic の Arif Mardin の判断でしょから、ま、いーんだけど。

さらにそこに加えられるのが、これまた「そっち系(って?)」には人気あったらしい Cornell Dupree のギターですが、以前よーやく御茶ノ水の某店で発見した Elliot Randhall センセのヴィデオに共演する Cornell Dupree を見て、シツレーだけど、有名なワリにゃ、あまし大したこと無いのねん、なんて思ったもんでございましたが、ここでも「だから何なの?」って感じのオリジナルどおりみたいなプレイで、もしかしてホントに大したこと無いのかも?(なんて言うと激怒するファンがいそー!)
てなこと考える間もなく、こんどは Billy Preston のオルガンが「さえずり」始めますが、これも好みの別れるとこじゃないでしょか。ワタシはもっとハモンドっぽい音が好きかな?(と言うより、ホントはワタクシ、Billy Preston のオルガンって「ただの一度も」イイ!と思ったことが無いのですよ)
続いてコンガ奏者の Pancho Morales、さらに Truman Thomas ってひとの( Fender Rhodes らしい、こっちに抜けて「来ない」音の)ピアノもいますが、なんだかとりたてて言うほどのプレイには思えないのは、そのトーンのせいもあるけど、なんたって Bernard Purdie のリズムがイキが良過ぎて、他の材料の味が弱くなっているせいかもね。

それでもご本尊のサックス・プレイは期待どおりのブロウをみせてくれます。
全体としては、オリジナルをとことん尊重したベースが、まごうかたなき Memphis Soul Stew であることをキープし続け、そこでサックスも華やかに飛びまわるのですが、良くも悪くもこのニュー・ジェネレーションのドラミングが、ベースが提示する基本リズムを「さらに刻み込んだ」、言わば「小割り」したリズムの複雑なシェイクによってグっと「ワルさ」を増している感じかな?
ホント、何度もしつこいようですが、Bernard Purdie の「ひとり勝ち」で、それ以外のバッキング・メンバーたちは(「スキルが」ではなく)「時代感覚」の面で、それについて行けてないような気がするんですよ。
あ、もちろん、この手のドラムのリズムが好きなワタクシにはこのテイクが、まさにツボでございます。

ところで、この Memphis Soul Stew、まさに King Curtis の代表曲だと思うんですが、この Fillmore West での三日間のライヴでは、最終日のラスト・ナンバーとして、たった一度だけ演奏されてるんですよ。出し惜しみ(?)したんでしょか。
あ、このテイクが収録されとる King Curtis Live at Fillmore West ( Atlantic AMCY-2905 )には、会場を埋め尽くした白人のヒッピーどもに合わせたのか、「あの」プロコル・ハルムの「青い影」なんてえのまで入ってて(ビリー・プレストンのオルガンがミソだな。ワタシはこれ、ダメなクチ)、他にもツェッペリンの Whole Lotta Love なんてえトンデモな選曲もあって笑かしてくれますよ。

ま、アルバムでは最後になってる Soul Serenade が、不慮の死を遂げた彼の葬儀の際の葬送曲として選ばれ、延々一時間に及ぶ演奏で彼を見送ったのでございましたねえ。

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