I Put A Spell on You

Screamin' Jay Hawkins


2004-12-09 THU.


なんだってまた I Put a Spell on You?ってお思いのあなた、そう思われるのもムリはございません。これまでだって、もう充分に(?)日記でも HP のコンテンツでもたっぷり語っておりますからねえ。
この上、なにがあるのか?と。

いえいえ、「この上」てな位相のモンダイじゃあないんですが、ちと、別ヴァージョンを手に入れちまったもんで、つい、ね。
前回は I Put a Spell on You の 8 つ目のヴァージョン獲得!などと騒いでおりましたが、それには SPELLBOUND のリミックス・ヴァージョンも含まれております。
ただ、リミックス・ヴァージョンってのが、ほんの少しばかりバランスを変えたり、各パートのエフェクトをいじったり、っつー程度で、「別ヴァージョン」と言えるのか?てなギモンがつきまとうものも含まれてるのもまた事実ですよねえ。
この I Put a Spell on You のリミックスは(ナゼか)大胆にもバックの女性のコーラスを「バッサリ」斬って捨てた、実に思いきりのいい「マイナス・リミックス」で、さらにディジタル・リマスタリングが施されておるのか、そのダイナミック・レンジまでが大幅に改善され、やたら現代のポータブル・オーディオ向きなサウンドになっておるのでございました。

さて、それはともかく、今回「新入荷」の(つっても、あたしんとこに、ってイミでございますが) I Put a Spell on You は、1972 年、Tennesse 州 Nashville の Woodland Sound Studio において収録されたもので、その時代にふさわしく、1970 年代的パッパラパーさ(なんじゃそりゃ?)と、やや整理されたサウンド・クリエイトの上で「ちょっとは」スマートに作ろう、っちゅー意図も垣間見えますが、ま、なんたって Screamin' Jay Hawkins ですからねえ。
アダルトで都会的でメロウな仕上がりになんぞ「なるワケない」んでして、ここでも、いささかソフィステケイテッド(舌噛みそ)なバック・グラウンドを作っている 21st Century Singers の健闘にもかかわらず、案に違わず Screamin' Jay は大暴れでございます。
ま、それでも公平な目で見れば、このアルバム( I Put a Spell on You CHARLY CPCD 8221 )での彼は(特に一曲目の Portrait of Man あたりじゃ、ね)、思わずハラハラっと落涙しそうな(?)哀感さえ溢れる一瞬(でしかないとこが彼のいいとこなんですがね)まであって、おお、今回の Screamin' Jay はちょと違うぞ!なんて思わせといて、ケッキョク終ってみれば、やはりいつもの「お下品・バカ騒ぎ・ご幼稚」な Screamin' Jay Hawkins の「世界」なのでございますよん。

先日の King Curtis の Bernard Purdie ほどではございませんが(いっちゃんの違いはキックがシンプルだってこと。バーナード・パーディのは、ともかくキックがスゴい!)、多少は 1970 年代的にパラったスネアなどで「倍刻み」の中抜き的なリズムを演出しており、そこらがややモダーンな印象を与えはしておりますが、どーも御大、あまりそんなこと構っちゃいないようでして、だからって歌い方を変えるなんて小ワザはいたしとりません(できない?)。
このバッキング全体をコーディネイトしてるのが自身も 6 弦ベース(あ、これを、最近の「本来のベースに太い側に一本足した 5 弦ベース、さらにその高音側にも一本足したりする 6 弦ベース」と同じ文脈で捉えてはあきまへん。おそらく年代的に見ても Fender Jaguar や Jazzmaster と共通したボディ・シェイプにギターのちょうど一オクターヴ低いチューニングの弦を張った Fender Bass VI*のほーでしょう)のプレイヤーでもある Tommy Allsup**でした。

*─ Fender Bass VI : 一見したところストラトキャスター用のものと似通ったピック・アップ(おそらく巻線径やターン数、またポール・ピースの保磁力などは異なるものと思われます)を三つ等間隔で配し(ただしストラトと違ってリア PU はスラントしていない)、Jaguar と同様なセレクター・スイッチ・パネルを持ちますが、PU が一個多いぶん、スイッチも増えて四個(三つは各 PU のオン/オフで、残り一個はコンデンサーを使ったトーン切り替え。ただし 1963 年以前のモデルでは PU がメタルのエスカッションを持ち、トーン Sw を省いてスイッチ三個だけになります)となっています。
コントロール・パネルにはマスター・ヴォリュームとマスター・トーン。ブリッジとフローティング・トレモロは Jazzmaster の流用ですがスケールは 762mm。
Jaguar & Jazzmaster と一番違うのは、Jaguar ではピックガードの上部に位置するハズ(?)のプリセット Vol & Tone およびスイッチが無いことでしょうか。したがってピック・ガードの上側はストラトのようなカーヴを描いています。

**─ Tommy Allsup : モロ白人の、カントリー&ロカビリー系のミュージシャン。1949 年にはすでに Oklahoma 州 Claremore で the Oklahoma Swingbillies の一員としてミュージシャンのキャリアをスタート。翌年、フィドル奏者の Art Davis とともに Kansas 州 Wichita の the Cowboy Inn へ。
1953 年には Tulsaに移り the Johnnie Lee Wills Band に参加しますが、後半では自身のバンド、the Southernaires もスタートさせています。
1958 年にレコーディングのため New Mexico の Norman Petty のスタジオに行ったことで Buddy Holly と出会い、そのバックでリード・ギターを弾くようになります。ただ、Buddy Holly が飛行機事故で死んでからは the Big Bopper の一員として Ritchie Valens のバッキングを担当するようになりました。
やがて西海岸に移り Liberty Records の A&R マンとして働いてもいますが、1968 年には Nashville の Metromedia Records に移り、ここでは数々のカントリーやウエスターン・スゥイングのアルバムをプロデュースしています。


他のパースネルとしては、ちゃんとした(?)ベースとして Joe Allen、ドラム&パーカッションの Kenny Malone、キーボードに Tony Migliario、リード・ギター Jimmy Kovards、ヴォーカル陣には前述の 21st Century Singers の他に Henry Dotson、David McKinely が参加。
さらにボンゴの Chips Young という顔ぶれとなっておりますが、個別の曲のクレジットではないため、この I Put a Spell on You でのベースが Joe Allen なのか Tommy Allsup なのかは不明でございます。

しかしまあ、それにしても Tommy Allsup なんてえ、もろホワイト・ミュージック系のミュージシャンが Screamin' Jay Hawkins のバッキングを担当するようになった、ってのはどんないきさつだったんでしょね?

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