Mr. Collins, Mr. Collins

Albert Collins


2004-12-19 SUN.


むっちゃヤワな女声コーラスが入って、軟弱路線一直線か?と思うと、ベース&ドラムのドライヴ具合を聴くと、これが意外にも、ハード・グラインドなファンキー・チューンなんですねえ。

ここでのシンプルながらなかなか効果的なベースは「もっちろん(?)」 Johnny B. Gayden。
よく決まってるキックが印象的なドラムは Soko Richardson。

いいリズム・セクションですねえ。

サイド・ギターは左 ch. からはやや歪み気味なスライディングを多用するギター、右 ch. からはカッティングをメインにしたキレのいいサイドが聞こえてきます。でも、クレジットでは三人載ってるんですよねー。その三人とは Debbie Davis、Mabon "Teenie" Hodges*、Jack Holder で、左 ch. の音の汚さは Debbie Davis かも、なんて言ったら失礼か?

バックのコーラスは Debbie Jamison と Vicki Loveland。
キーボードは Eddie Harsh で、他にオルガンと指定で Charles Hodges*

*─ さて、ここで Hi Records について少し寄り道を。
Hi Records は Tennesse 州 Memphis を本拠とし、1957年、Ray Harris の 3ドル50セントの投資によって創設されたレーベルで、ソウルの歴史を語る上で避けて通ることは出来ません。
1950年代中期に SUN と Meteor でプロデューサーをしていた Bill Cantrell と Quinton Claunch のふたりが後に Hi の社長となる Joe Cuoghi にアプローチし、レコード販売店やジューク・ボックス・サーヴィス事業(一種のアンテナとして、どの、あるいはどんなレコードがよくかかるのか?というデータを提供することになる)で手を組んだものです。

1958年に本格的なレコーディングを開始した Hi Records の最初の成功は、1959年の the Bill Black Combo "Smoky Pt.2"( R&B 部門 #1 )によるものです。
Bill Black は Sun で録音された Elvis Presley の全曲のバックに参加したベーシストでした。
ところで、Hi Recrds はブルースをベースとした楽器構成を基本としているのですが、インストでのヒットを狙うにはやや品不足だったようです。そこで Ray Harris が目を付けたのがプロデューサーやホーン・アレンジャーとして Home Of The Blues などのレコーディングに関わっていた Willie Mitchell でした。
Willie Mitchell は 1928年に Mississippi 州 Ashland で生まれ、1930年ころ一家を挙げて Memphis に移ってきています。高校のバンドでトランペットを吹き、さらには自分のバンドも持っていましたが 1950年に兵役で中断、そこでピアニストの Onzie Horne に出合い、アレンジや、譜面起こしなどを教わったようです。1960年、West Memphis に帰った彼は Home Of The Blues のハウス・ミュージシャンとなり、Hi や Stax 系のレコーディングでホーン・アレンジを担当し、1961年に Hi のアーティストとなり、初ヒット The Crawl を出しました。また、彼のバンドはそのまま、Stax における「黒人と白人混合のセッション・ミュージシャン・チーム」のような the Hi Rhythm Section となっています。

古い Ampex の 4トラック・レコーダー 2台を結合した(どーやったかは不明。このころのトランスポートはリアル・タイムのシンクロナイズは不可能だったハズで、両者のキャプスタンを機械的に完全に結合でもしない限り「必ず」ズレる、と思うんだけど・・・)8トラックのレコーダーと、回路的には全管球式の回路によるトーン・キャラクターが Hi のサウンドを味付けしています。
この録音機材やテクノロジーによって生まれるサウンド・キャラクターってのは、マニアからは軽視されがちで、やれ、フィル・スペクターとか、プロデューサーの「手柄」ばかりにされちゃいますが、それは「サウンド」の話しであって、実際には Excello など、スタジオもプロデューサーも違っても、プレス・マスターを作るカッティング・ヘッドをドライヴするアンプのアウト・プット・トランスと、ヘッドのコイルとのインダクタンス成分の干渉によって、独特のレゾナンス感を持つ「トーン」が存在します。したがって同じマスター・テープを使っても、カッティング・ヘッドを経ていない CD などではそのキャラクターが消えてしまう場合もあります(ただし CD であっても、マスター・テープが散逸してしまっていて、やむなくアナログ・ディスクから起こしたものには、その「香り」が残るワケですねえ)。

ま、それはともかく「サウンド」としては、Al Jackson(後には STAX の Booker T のグループに参加してます)あるいは Howard Grimes のドラム、Bobby Eammons のオルガン、Reggie Young のギター、Tommy Cogsbill のベース、そしてホーン・セクションには Andrew Love、Ben Cawley、Charles Charmers、James Mitchell、Gene Miller、そして Wayne Jackson という顔ぶれで、Hi のレコーディングを支えました。

さらに1966年から1968年にかけては the Hodges brothers ─ ギターの Mabon Teenie Hodges &ベースの Leroy Hodges、オルガンの Charlie Hodges ─ が加わっていましたが、1964 年から1969 年の間に 20-75/Secret home、Bad Eye、Mercy、Soul Serenade、Prayer Meetin'、30-60-90、Uphard と 8 曲のヒットを出しています。
この Hi records のテイクはイギリスの London record によって発売されています。

その後 Willie Mitchell は副社長となり、Al Green をプロデュース、洗練された「ソウル」としてポピュラーのゾーンにまで到達するサウンドを打ちたてています。ただ、Hi Records そのものは1979年に Cream Records に売却されてしまい、それ以降イギリスの Demon Records からリイシューされております。

the Hodges Brothers はギターの Mabon Teenie Hodges &ベースの Leroy Hodges、オルガンの Charlie Hodges からなり、このアルバムには Leroy Hodges 以外の二人が参加してる、ってワケ。

他に参加しているのは the Uptown Horns と言われるブラス・セクションで、その構成は Crispin Cloe のアルトまたはバリトン・サックス、Arno Hecht のテナー・サックス、Hollywood Paul Litteral のトランペットに Bob Frank のトロンボーンです。
この曲は Albert Collins 本人の作。

まず、クセのあるギターのリフに女声コーラスが骨抜きにかかり、そこにガッツな(?)ベースとドラムがなだれ込んで来るのですが、例によって自らも「唸り」ながら弾きまくるテレキャスターが「さすが」のコリンズ節でございます。
ところで、この、弾きながら「唸る」ってヤツ、完全にトレース(どっちがどっちを、かは判りませんが)してるか、ってえと、そゆ部分もありますが、ちょとちゃう部分もあったりして、まあ、あまりシビアにシンクロさすもんでもないか?っちゅー感じね。

でも、この Pointblank/Charisma 7243 8 39194 2 0 Albert Collins の、これが一曲目なワケですからねえ。そのアタマに、この「ねえ、コリンズはん♡。コリンズはんってばぁ」が入ってるんですから、まったくもう。

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