You Don't Love Me

Clarence Edwards


2005-03-22 TUE.


昨年の今頃には Magic Sam による You Don't Love Me を採り上げましたが、そこでもちょっと触れていた COUNTRY NEGRO JAM SESSION Arhoolie LP-2018 っちゅう、実にもう無神経なタイトル(ホント、ひょっとしてどっかの差別用語摘発団体みたいなのに「つるし上げ」を喰らうんじゃないか?っちゅーシンパイもあったんですが、このアルバム・タイトルはネット上で検索すればいくらでも出てきますから、ここはひとつ、すべての罪は未だにこのタイトルで販売している Arhoolie にある、っつーことで⋯)のアルバムに収録されているアコースティック(いわゆる最近のアンプラグドと称する録音は、使ってるのが生ギターっぽいけど、実際にはアンダー・サドル PU から採ってる純然たる「プラグド」でしょ。でもこれはほんまもんの「ナマ」でっせ!)による You Don't Love Me なのでございます。

Junior Wells & Buddy Guy、Magic Sam、Eddie Taylor とどれもエレクトリック・ギターによるリフがとっても特徴的なこの曲ですが、これがアコースティックだとどーなるのか?っちゅーギモンに対して、もっとも意外な「解」として、およよよ⋯とズっこけさせてくれたのがこの Clarence Edwards が兄弟の Cornelius、ヴァイオリンのプレイヤー Butch Cage と一緒に演奏したこの録音でございます。

なんと言っても、このダラ〜っとした(?)ユルユルなリズムがいいですねえ。そして、この独特な解釈によるユニークなリフ!
なんともほのぼのとした味わいで、キンパクカンたらいうものがいっこもございません。そして背景でキ〜コキ〜コとさえずる(?) Butch Cage の鄙びたヴァイオリン(なんでだか、このひとのプレイって「フィドル」っちゅう単語がしっくり来ないよな気がするもんで、あえてヴァイオリンと言わせていただきます)⋯いやあブルースですねえ。
おまけにこの Clarence Edwards の声もいいんですよ。ワタクシ個人の好みからはちょとハズれとるんですが、この曲には実にピッタリ来ております。

Clarence Edwards は 1933 年 3 月25日に Louisiana 州の Linsey(あるいは Lindsay )で 14 人の子供のひとりとして誕生した、とされとりますが、はたして彼が末っ子だったのかどうか?については判断できる資料は発見できませんでした。
そして iceberg によれば Linsey、AMG では Lindsayとされるその生地についても、Yahoo、Wikipedia および Google の検索では「?」のままです。手元にある Louisiana 州の地図もカンタンなものなので載っているワケもなく、一体、州のどの辺なのか、さっぱ判りません。
ま、彼が 12 才の時に一家を挙げて Baton Rouge へ出て来た、とされていますから、十数人の移動を考えると、おそらく Baton Rouge 近郊の、もしかすると現在では市に吸収合併されちまった地区だったのかもしれません。
おそらく Baton Rouge に出て来てからギターを弾き始めたらしいのですが、彼の音楽的素養は祖母が所有していた Charlie Patton のレコードを聴くことから始まったようで、他にも Sonny Boy Williamson(資料には I あるいは II の区別が無いのですが I でしょうね?)、Kokomo Arnold から多くを学んだ、とされています。彼のスタイルは Charlie Patton にその多くを「負っている」という分析もあるみたいですが、歌のほうでは Howlin' Wolf の影響を指摘している資料もありました。

1950 年代には the Boogie Beats(兄弟の Cornelius に Landry Buggs、そしてドラマーの Jackson Acox からなるバンド)や the Bluebird Kings(こちらは構成メンバー不明です)というバンドに所属して周辺のブルース・サーキットを回っていたようです。
その彼が初レコーディングを経験したのが Harry Oster によるフィールド・レコーディング(実際に殆どはその演奏者の自宅や、自宅周辺で録音されたそうです)で、その時の録音は現在 CD 化され、未収録曲もまとめた Arhoolie CD 372 として 25 曲がパックされています。
ここでの Clarence Edwards はやはり兄弟の(いっつも言うけど、なんで兄と弟の区別をつけねえんだ?ったくぅ!) Cornelius にヴァイオリンの Butch Cage( James "Butch" Cage : Mississippi 州 Hamburg で 1894 年 3 月16日生まれ。つまり Clarence Edwards の実に 39 才年上! 最初はギターも弾いていた、と言われるが 1911 年に出逢った二人のミュージシャンから教わってヴァイオリンに移行する。1927 年のミシシッピー河の大氾濫の後 Louisiana 州に移り、雑多な職業を経験していたようだが、週末にはその演奏で近隣の住民を楽しませて次第にウデを上げ、1959 年の Harry Oster によるフィールド・レコーディングに Willie B. Thomas とともに参加して頭角を表し、1960 年には Newport Folk Festival にも出演して注目を浴びる。時系列としてはこの Butch Cage の録音の方が Clarence Edwards より先?って感じもするけど、Arhoolie 側に Clarence Edwards の正確な録音日時が残っていないため「?」)と組んで、この You Don't Love Me の他にも Smokestack Lightning 、Stack O'Dollars 、Thousand Miles from Nowhere を録音しています。

このアルバムの後、1970 年にはカントリー・スタイルではない録音もされているようですが、そのトラックはコンピレーション・アルバムに収録されているようです。その後しばらく彼は演奏活動から遠ざかっていたようですが、1980 年代に入って Tabby Thomas に勧められて彼の店 Blues Box クラブに定期的に出演するようになりました。
1990 年には彼にとって初めての「フル・アルバム」 Swamp's the Word を製作し、そこではアコースティックとエレクトリック両方のスタイルでレコーディングをしています(現在では Red Lightnin' で入手可能、らしい)。おそらくこの You Don't Love Me の彼を想定して聴くとあれれ?となるでしょが、逆に You Don't Love Me が特別だったのかも・・・

1993 年 5 月20日、Louisiana 州 Scotlandville で死亡。彼の死後、Baton Rouge や New Orleans のクラブでのライヴ録音 10 曲を含むコンピレーション・アルバム I Looked Down the Railroad が 1996 年にフランスの Last Call からリリースされています。

permalink No.1064

Search Form