My Little Machine

Eddie Taylor


2005-09-23 FRI.




My Little Machine というと、今年 3 月 3 日に採り上げた Jimmy Rogers を思い出しますねえ。
あのときは「それぞれの」 My Little Machine についての話が弾みましたっけ。

本日は、これまたワタクシのお気に入り、London の、Chalk Farm Studio において 1974 年の 2 月 3 月そして 4 月とほぼ三ヶ月をかけて録音され、BIG BEAR RECORDS から BEAR 6 Ready for EDDIE としてリリースされましたアルバムに収録されたヴァージョンでございます。

いやもう、なかなかに Eddie Taylor のブリリアントかつリリカルなギターが実に快いのでございますが、なんだかホロー・ボディとは思えない、芯のあるかっちりした音で(ってそりゃワタクシの ES 355 に対する「無知」からの偏見なんでしょうが)、なんとなく箱モノの「ぼわんぼわん」さが少ないよな気がいたします。

イントロは SAVOY BROWN の Bob Hall のステディなピアノでございまして、これがまあ、なかなかに健闘いたしております。
ま、Graham Gallery のベースはちと一本調子でいささか興を殺ぎますが、でもまあ、なんとかブルースに徹しようとする姿勢は感じられますね。
それにしても、なんだか Eddie Taylor がとても唄いやすそうにしてるよな気がしませんか?
またギター・ソロだって、誰に気兼ねすることもなく楽しそうに弾いておるような⋯

Bob Hall のピアノ・ソロでは、途中ちと詰まったかのようなとこがあるんですが、すぐさま Eddie Taylor がギターでのバッキングで穴を埋めてますねえ。さすが!

それにしても、ブルースっちゅうと、ちょい歪み気味の音じゃないと、なんてギターの音をそっちに持っていくプロデューサーってけっこう多そうなんですが、ここでの Eddie Taylor のギターは、実際に聴いていただけば判るように、歪みの無い、クリアーな上に「たっぷりめの」リヴァーブっちゅう、ワタシにとっての Eddie Taylor Sound そのまま、って音でございます。

これぞ Eddie Taylor!

「運命の」1977 年!⋯あ、運命の、っつーのはワタシにとって、っちゅうイミで、Eddie Taylor にとって、ではございません。あの、フェントン・ロビンスン入国不許可事件によってトツゼン Louis & Dave Myers にドラムの Oddie Payne Jr. とのパックで「日本行き」ですよー。

1977 年、12月の12日、粉雪のちらつく弘前駅に一行を迎えに行きました。
当時の駅舎はまだ木造で、降車口は「吹きっさらし」、天井には薄ら寒い裸電球。駅前の広場は開いている商店も地味で、いかにもうらぶれたフンイキで⋯降り立った一行は「おいおい、ホントにこんなトコでライヴすんのかよ?オレたち、ハメられたんじゃねえのか?」っつー不安ありありでございました。いちおーホテルに案内して荷を解かせ(これで、どーやら寝るとこだけはダイジョブ?と少し安心してたみたい)、日専連会館 3F ホール(実は会議室ねん)ちゅう会場では、その上の階にちゃんと楽屋を設け、きちんとリハもしたんで、だんだん疑い(?)も消えたみたいですけどね。

でも、リハが始まったら問題続出!まず、Eddie ちゃんのアンプです。
彼の Gibson ES-355 TDSV は「SV」とあるよに、ステレオ・ヴァリトーンってヤツなのね。
アウトプットがステレオ・ジャックになってて、フロントとリアのピックアップがそれぞれ独立して L&R で出てくるんですが、アンプ側のシールドは二つに別れてその先にはモノラルの#47が付いてるんで、アンプのリヴァーブのあるチャンネルと無いチャンネルに差して使うんだって。で、彼はリヴァーブを「最大!」にまで上げちゃうんですが、そうすっと「ギシャ~ン!」とか「ゲショ~ン!」っつー「この世のものとは思えない」異音が出てくるじゃあ~りませんか!ううう、そっかあ~、スプリング・リヴァーブって、いつも一定のレベルで鳴らしてるのをツマミ上げるにしたがってそっからの信号をブレンドすんじゃなくて、ツマミ上げてくと、その分スプリングをブルブルさすパワーが上がってくのね〜。
だもんだから、エディくんのセッティングじゃ、もうスプリング・リヴァーブ・ユニットにしてみりゃあ「生まれて初めて」フル・パワーでブルっちゃったもんだから、あっちこっちに振れ過ぎてぶつかっちゃうんでしょね。

これでサイショのアンプは「クビ!」いそいで手配してフェルナンデスのアンプに JBL ユニット搭載した、ってのが持ち込まれたんですが、さっきのよりゃあマシだけど、時々「ガシャ~ン!」ってえ音が⋯仕方無くそれ使うコトにしたんですが、Eddie くんゴキゲン斜め。
それでも本番が始まり、ステージに登場するやいなや「エディ!エディ!」のコールにだいぶ気を良くしたみたいですが、ちょとルイス&ディヴのほーを気にしてましたねえ。こいつらヘソ曲げなきゃいいが⋯ってとこだったんでしょう。

ま、ショージキ、Louis は「なんだよう、みんなエディ、エディって、ジョーダンじゃねえや」つー表情も見せてましたねえ。それでも、トマ男(スティーヴ・トマシェフスキー。ナゼか弘前では「トマ男(お)」と呼ばれる)から言い含められてるんでしょか、トリは Eddie Taylor で、っつー暗黙の諒解があったよーで、淡々とオープニング・アクトをこなしておられましたが。

Oddie Payne Jr.のなかなか楽しいパフォーマンス(お決まりの I don't know ともひとつ、Hiyo! Silver ってえ Lone Ranger の曲やったよーに記憶してるけど⋯)の後、やはり〆は Eddie Taylor でございます。もちろん、Louis Myers だって悪くはなかったんですが、いざ Eddie Taylor が歌い出したらもうダメ。格が違う、と言うか、ワタクシがよく使う「プレゼンス」がある(存在感プラス手触りとしての実体感、みたいなもの)っちゅーか、もう目の前に Living Chicago Blues が輝いている!んですねえ。

で、その時の印象からすると、たとえば ADVENT(最近では Hightone?)からの I Feel So Bad を聴いた時など、どっか「違う」んですよねー。いえいえ、むしろ良く出来たアルバムですよ。シブい仕上がりで。
でもねえ、なんだかツマんないんですよ。ま、こんなブンセキは間違ってんのかもしんないけど、白人のブルース・マニアが求める「シリアスな」ブルースをアカデミックにまとめてみました、みたいな感じがして、イマイチ、ピンと来ない。


そして出会ったのが、この Ready for Eddie でした。一聴するなり、うわあ!これだよ!Eddie Taylor はこうじゃなくっちゃあ!つうワケで、たしかに白人のギターがタマにとるソロじゃ「お決まりの」ゲチャゲチャ・トーンだったりもしますが、それだって「微笑ましい」てなもんで、Eddie Taylor の「あの」ブリリアントな、しかも「いきいきした」ギターがたっぷり聴けるんですからタマりません。あ、そーいえば厚木ファッツはんもこのアルバム「いい」って言ってませんでしたっけ?みなさまも機会がございましたら、どーぞ聴いてみておくれやす。


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