Hidden Charms

Willie Dixon


06-02-12 SUN.




1962 年は American Folk Blues Festival のスタートした年でもありますが、同時に彼が the Blues Heaven Foundation を設立したのもこの年である、とする資料がありました。
しかし、一般には Willie Dixon がシカゴ、サウスサイドの Amos Alonzo Stagg School に於いて、若い世代にブルースをしっかり伝えようとする「 Blues In The School 」という試みを開始したのが 1970 年、そして Blues Heaven が 1982(あるいは 1984 )年から本格的な活動を開始した、という説の方が主流のようです。
だいいち 1962 年の Willie Dixon には、まだそれほどの(特に経済的)余力は無かったハズですから。

むしろ 1962 年というのは、彼が、これもマディに提供したナンバー "You Shook Me" が録音された年、として輝きを放つ、と言えるかもしれません( Chess 1827、リリースは 1964 年。ただし発売当時の A 面は "You Shook Me" ではなく、"Muddy Waters Twist" だったハズ)。
その "You Shook Me" は 1968 年に録音されたレッド・ツェッペリンのファースト・アルバムで採り上げられ、さらにそこにはもう一曲、"I Can't Quit You, Baby" までが収録されていたのでした。
もちろん、その背景にはヨーロッパを襲った(?)American Folk Blues Festival という「ブルース・パッケージ」の存在が(そして同時にそれをまとめ上げた Willie Dixon の存在も)大きく影響を与えたイギリスでの「ブルース・ブーム」があったワケですが。
そして実際にはツェッペリンに先駆けることほぼ 5 年、あのローリング・ストーンズが、これもまた彼のナンバー "Little Red Rooster" をチャートの 1 位に送り込んだのは 1964 年11月のことです( F-12014、カップリングは "Off The Hook"!もちろんストーンズがブルースを採り上げたのはこれが最初ではなく、それ以前にも 1964 年 2 月の "Little By Little" なんてのがありますが)。

Willie Dixon にとっての次のマイルストーンは Koko Taylor の "Wang Dang Doodle" でしょうか?これは Chess ではなく、Checker 1135 として 1966 年に発売され、すぐにチャートを上昇して最高位は R&B チャートの 4 位を記録しています。
ところで、この 1960 年代の最後に、彼は「自分自身の」アルバムを Columbia に吹き込みました(ただし、それが彼の初アルバムではなく、実際には 1960 年に Bluesville に Willie's Blues を吹き込んでいる)。それが 1970 年リリースの I Am the Blues(日本盤は CBS SONY から SOPJ-97 として 1975 年に発売)収録曲は

Back Door Man
I Can't Quit You, Baby
The Seventh Son
Spoonful
I Ain't Superstitious
You Shook Me
I'm Your Hoochie Coochie Man
The Little Red Rooster
The Same thing


です。そしてそれに呼応するかのごとく the Chicago Blues All-Stars を率いてヨーロッパ・ツアー。

Willie Dixon はそれまで、どちらかと言うとレコード会社にせよ、いろいろな興行主にせよ、彼らの言うとおりに働き、その代価を得ていたワケですが、さすがに 1970 年代ともなると、いかに自分のした仕事に対して、「途中で」かなりの金額が「くすね」られているか、と言うことに気づき出しています。
たとえば、なぜツェッペリンは "Bring It On Home" をタダで使っているのか?また "Whole Lotta Love" だって彼の "You Need Love" のパクリじゃないのか?
これらはすべて法廷に持ち込まれ、結局、示談が成立して和解することが出来ました。それが 1977 年のことです。
1984( Alt. 1982 )年には NPO、the Blues Heaven Foundation を設立し、ブルースマンの権利を守るとともに学習システムを整備し、またプロモートも行う活動を本格的にスタートさせています。

Willie Dixon の Blues In the School を受け継いだ、と言えるのが Billy Branch かもしれません。
Billy Branch は Willie Dixon の Chicago Blues All-Stars にも 1970 年代末から参加し、多くの薫陶を得てきていますから、それも当然の流れだったのでしょう。

1988 年にはアルバム Hidden Charms — Bug Music / Capitol C1-90595(そのタイトルから誤解されるのは仕方ないのですが、このアルバムの収録曲に「あの」 Hidden Charms は「入っていない」んですねえ)

Blues You Can't Lose
I Didn't Trust Myself
Jungle Swing
Don't Mess With the Messer
Study War No More
I Love the Life I Live
I Cry For You
Good Advice
I do the Job


を発表し、これは同年の Grammy Awards、Best Traditional Blues Recording 部門を獲得しております。
続く 1989 年には Don Snowden との共著で自伝『 I Am the Blues: The Willie Dixon Story 』を刊行し、また Chess からは彼の書いた曲を集めたボックス・セットも発売されました。そこに収録されたのは、まさに彼の楽曲の集大成と言うことができます。

でも、それはちょとデータとしてもデカいので明日ね。

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