Who the hell is that?

Alligator Tale vol.02


06-10-14 SAT.




1970 年に Chicagoで Delmark Records に職を得た Bruce Iglauer は、ブルース・クラブ巡りをするうち、サウスサイドの Florence's Lounge で Hound Dog Taylor を見て「電撃」を受ける⋯となるとドラマチックでよろしいのですが、実際には Bruce Iglauer がまだ大学に在学中と思われる 1969 年に、せっせと Chicago に通いつめていたおかげ(?)で、すでに Hound Dog Taylor その人の演奏には触れているんですね。
ただし、その時は Brewer Phillips に Ted Harvey という the HouseRockers と一緒にではなかったせいか、Bruce は「たいしたミュージシャンではない」と判断していたそうです。
それが、翌年の 2 月に Florence's Lounge で初めて the HouseRockers としてのステージを見て、その魅力を見直したのでしょう。しばらくは Delmark のボス、Bob Koester に彼らをレコーディングするように、と口説いていた、とされますが、ついには、それでは自分でレコード化しよう、と考えたようです。

1971 年の春、二晩(そ、まだみなさん Day Job をお持ちですからね。スタジオ入りは「夜だけ」なのです)連続で Chicago の Sound Studios を使って録音が行われ(その部分ではおそらく Delmark の Bob Koester のなんらかの助力があったのではないでしょうか?ジャケットには Very specoal thanks to... として彼の名前が「ちゃんと」記されています)、それが Alligator の記念すべき一枚目のアルバム、AL-4701、Hound Dog Taylor and the HouseRockersとなりました。
このときレコーディングに使ったギターアンプはどうやら Florence's Lounge で彼らが使っていた(おそらく店の備品じゃなかったか?と思うのですが、確認は出来ておりません)ボロボロの Sears Roebuck に OEM されていた Silvertone 製のもので、ALTEC の 10 インチ・スピーカー 6 発、というものだったようです。
レコーディングはシンプルな 2 トラックのステレオ・テープレコーダーにダイレクトに録音され、当然、オーヴァー・ダブや後処理も行われていません。
この時の録音には 900 ドルを要した、とされています。

ところで、そのブランド・ネーム Alligator ってのがどこから来たのか、という点ですが、とあるサイトでは、Bruce Iglauer がお気に入りのリズムを取るときに歯をカチカチ言わせていたから、というのが載っておりました。
ザンネンながら、ワタクシ、Alligator ってヤツの実物をじっくりと観察したことがございませんので、ホンモノも歯をカチカチさせるのかどうか定かではないのですが、もしかすると、漫画チックな揶揄から来たニックネームとして言われていたのかもしれませんね。

初回プレスは僅か 1,000 枚。
それを自分のクルマ Chevy の後部座席に載せて Chicago から New York にいたるロック専門局や大学があればその College Radio Station に AL-4701 Hound Dog Taylor and the HouseRockers を託し(もちろん、それがスグにオン・エアされる、と言うワケではなかったようですが)、その実績をバックに地域のレコードのディストリビューターの元に行き、「この地域のロック FM 放送局ですでに流されている」と告げ、そのアルバムを扱う気があるか?と持ちかけると、どこでも「売りましょう」と言ってくれたとか。ま、ウソじゃないですからねえ。

もちろん、この時点では Delmark での勤務と、自分のビジネスを両立させていたワケで、それでいて Hound Dog Taylor の面倒までみていたようですから、さすがに手に余るようになり、ついに独立することとなり、アパートの自室を「本社」として資本金 2,500 ドルで Alligator Records を設立しました。
当然その部屋は「製品」で溢れ梱包台が場所を取り、普段の生活を多少は不便にしたようですが、多くの弱小マイナー・レーベルが陥る「そのままフェード・アウト」ということにはなりませんでした。
彼がリリースした Hound Dog Taylor は「目覚ましい」セールスとまでは行かないまでも、着実に売れ続け、そこで得た利益を元に翌 1972 年には Alligator の第二作、AL-4702、Big Walter Horton with Carey Bell をリリースすることが出来ました。
もちろん、多大な融資が見込めない当時の状況では、リリースしたアルバムの売り上げが充分に溜まったところで次作に、という態勢ですから、まだ一年に一枚、というペースが精一杯だったようですね。

その AL-4702 ではギターに Eddie Taylor が入り、全体をグっと引き締めています。
このアルバムも「爆発的」ではないものの着実に売れて、次の 1973 年、AL4703 : the Son Seals Blues Band へとつながって行ったのでした。

この Son Seals については、彼が発掘した、と言うより、彼の友人で、ブルースマニアの Wesley Race に「教えられた」というエピソードがライナーには記されています。
ある晩、Chicago's Jazz Record Mart( Chicago's Jazz Record Mart ってBob Koester のお店です。今は、単にJazz Record Martって呼ばれてます。⋯ by 江戸川スリム氏)の閉店間際、そろそろ帰ろうかな?という時に Bruce Iglauer に電話があり、出てみると Flamingo Club からで、Wesley Race がバックの轟音に負けないように怒鳴っている声が⋯「 Bruce!ちょっとこれを聴いてみてくれ!」そう言うと受話器のマイクをステージの方に向けると、そこで聞こえて来たのは、少なくとも Chicago のブルースマンはすべて知っている、と自負していた Bruce Iglauer でさえ初めて聞く新鮮な演奏だったのだそうです。

Bruce; Who the hell is that?(こ、こいつは誰だ?)
Wesley; That? That's Son Seals.(こいつかい? Son Seals ってヤツさ)

ただ、別な話として、Hound Dog Taylor が、次は誰を録音しようか?と迷っていた Bruce Iglauer に、かって自分のバックでドラムを叩いてくれてたこともある Son Seals をプッシュした、という説もありますので、そちらも併記しておくことにいたしましょ。

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