Blues Before Midnight

Robert Nighthawk


2004-06-07 MON.



昨年の 7月22日付では Sweet Black Angel を採り上げましたが、今回のこの曲 Blues Before Midnight(なんとなくウチの HP ─ Blues After Dark に似たタイトルやおまへんか?)は、このレコーディングを手掛けたプロデューサーの George Mitchell(他にも Rounder や Fat Possum などでもプロデュースしてます)によれば、「ワタシの記憶が正しければ、これが Robert Nighthawk の実質上の最後の吹き込みのハズだ」⋯このほぼ二ヶ月後に死亡していますから、それはたぶんマチガイ無いでしょう。

イントロからして透明感のあるギターが、まるで散歩でもしてるよに気ままに動き、歌の入らない、ギターだけで描いていく「真夜中の少し前」という雰囲気は、眠りにつく直前の独特な倦怠感も漂っているようで、しかもこの直後に「永遠の眠り」についたという彼を想えば、Blues After Hours みたいな「名曲」とは言えないにしても、なかなか見過ごすことはできません。
前述の George Mitchell はまた、1967 年 8 月、Crystal Springs で行われたフィールド・レコーディングの際に、最初のうち彼( Robert Nighthawk )はすでに健康に陰りが見え、だいぶ具合が悪そうに見えて、彼にとってはギターを教えてくれた先生でもあった Houston Stackhouse のバックに回っていたものが、そのうち、何曲かではリードを取り始めたので驚いた、と回想しております。
そして最後に彼をリードに据えて録音したのがこのトラックでした。

ステディでベーシックなブーギ・パターンを低音弦をメインに刻んでゆく Houston Stackhouse のギターに乗せて、彼の Last Tune が淡々と演奏されています。
その背後でとってもチャーミングな、「ドラマー」なんていう自意識過剰なナルシストたちが存在を主張し始めてブルースをダラクさせる以前の、ルーラルなドラミングを花開かせているのは、ワタクシが深く敬愛する Peck Curtis 師であらせられますよ。
そのドラミングは、師のココロの赴くまま、あっちを叩き、こっちを叩き、時にカウベルでアクセントをつけ、時にロールをはさみ、ホントに自由気ままに「語って」いきます。
もちろん、最近のナマイキなドラマーどもには、「なんだこりゃあ?」とか「こんなのドラムじゃねえ!」とか言われるでしょが、ま、そんなことを言うってのは、そんだけ「様式」に縛られてる、っつーだけのことだぞ。
⋯なんてカゲキなことを言うのも、ワタクシ、そもそも、ブルースにタイコなんぞ無くたっていっこうに構わない、と思っているからでして、特に、この日記でも再三採り上げている barrelhouse bh 04、Chicago Boogie を聴いていただけば判ると思いますが、ドラムなんていなくても、いやいないからか(?)素晴らしい演奏ってのがたくさんあるんですよ。

ヴォーカルひとつでも成り立つのがブルースですが、それにハープが一本加わる⋯ん~ブルースやねえ。でギターも弾きながら唄う⋯これもブルース。
ランボーな分類ながら、ここまでがベーシックなブルース、言わば出発点やったんやないか、と思ってます(ただブギウギ・ピアノはまた別な系譜に属するとは思いますがね)。
やがて複数のギターが役割分担として低音部のベース・ランと上モノに分離し始め、それがベース・ギターとしてバンド・ブルースにつながって行ったんじゃないでしょか?
だからウッド・ベースなんてのは、むしろジャズからの逆輸入だったんじゃないか?ってえ気がするんですが、そこら検証もしておらず、ただの思いつきですからあまり断定的なことは言えません。

で、ドラムに関してはバンド・ブルース化する際に導入され始めたものと思うのですが、その「流れ」とはちょっと違う位置にいたのが、この Peck Curtis だったんじゃないか?と考えています。
とゆうのは、この曲や、一連の King Biscuit Time でのサニー・ボーイとの演奏で聴くこの人のドラムって、ホントに「いわゆるバンド・ブルース」におけるドラムとは明らかにちゃいます。
なんだったらヴォーカルとハープにこのドラム、なんて構成でもフシギはないし、あるいはギター二本にこのドラムでもイケちゃう。
おそらく、この系譜につながるドラマーってのは殆どいない、あるいは「絶無」だったんじゃないでしょか?まあ、ともかく聴いていただかなくちゃハナシにならないんで、出来たら↓の
Right Round the Corner
で試聴してみてくださいませ。
ココロがホンワカするよな Peck Curtis のドラムを聴いて、ブルースにとってドラムとは?ってのを考えていただければ、と思います。

ところで、国内の某サイトで、Robert Nighthawk を左利き、としてるのを発見して仰天したんですが、それって、どっから来てるんでしょ?
少なくともワタシがこれまでに目にした画像ではギターをフツーに右で持ってるのばっかしなんですが・・・???字書くときに左手ででも書いてたんでしょか。
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