Don't sell it - don't give it away

Oscar Woods


2004-10-18 MON.


昨年 8 月 3 日の Evil Hearted Woman Blues 以来、久しぶりの Oscar Woods です。
前回は Bob Brozman 著書、「 The History and Artistry of National Resonator Instruments 」に言及し、彼のいう Oscar Woods におけるハワイアン・スティール・ギターの影響について触れました。

さて今回の Don't sell it - don't give it away ですが、それが収録された Yazoo L-1032 BLUES FROM THE WESTERN STATES 1927 - 1949 のライナー(著者名は三人挙げられていますが、総監修が Nick Perls となっているので、彼の意見と考えてもよいのではないでしょうか)では、ハワイアンではなく、そのハワイアンからスティール・ギターを採り入れてふくらみを持った「ウエスタン・スイング」を経由したもの、と分析しているようです。
この曲自体は Jimmy Davis も採り上げている、とありましたが、それって、あの Maxwell Street Jimmy Davis* のことでしょか?
だとしたら Oscar Woods の後の時代のひとだよね。
なにしろ Oscar Woods の初吹き込みと思われるのが、New Orleans で Lone Wolf 名で吹き込みをしたとされる 1936 年 3 月21日ですが、その時 Maxwell Street Jimmy Davis はまだ 11才ですから。

* ─ Maxwell Street Jimmy Davis: 1925 年、Mississippi 州 Clarksdale 生まれ。
初録音は Sam Phillips の Sun に 1952 年 8 月、Cold Hands / 4th and Broad を実名の Charles Thomas 名義で行っています。この録音は Chess と JIm Bulleit の Bullet レーベルに売られました。ただし、売られはしたものの発売には至らず、未発表のままとなっていますが。

1964 年には二曲を吹き込み、それは Testament に収録されて発売されたそうです(未確認)。また初のフル・アルバムは 1965 年に Elektra から。
その他 Takoma や Sonet などにも収録された曲があるようですが、オーストリアの Wolf からの Chicago Blues Session Volume 11( 1989 年)が知られているようです。この Wolf といい、Sonet といい、どちらかと言うとヨーロッパでむしろ人気のあるブルースマンだったのかもしれません。
ただ、彼の場合、その活躍の場はレコードよりも、もっぱら Maxwell Street での路上ライヴにあったようですが。

Chicago に出て来る以前には Silas Green や Rabbit Foot Minstrels で各地を旅し、1946 年には Detroit、その後また各地を旅して、結局は Chicago に落ちつき、以後、生涯の殆どをそこで過ごしました。
一時期、Maxwell Street に小さなレストランを開いたこともあったようですが、それでも路上でのパフォーマンスは続けていたようです。

1995 年12月28日、心臓発作で死亡。

さて、今回の Oscar Woods、なかなかに陰影のある艶っぽい曲に仕上げていますね。
これまた Evil Hearted Woman 同様、スパニッシュ・チューニングのオープン G( 6弦から、D-G-D-G-B-D とチューニングする。両端、つまり 1 弦と 6 弦がルートでは無いのでストロークには向かず、フィンガー・ピッキング向き。ただ、それでもストロークで引くキースなんかは 6 弦を取り外し、最初に鳴る弦が主音となるようにしている)での演奏で、これまた Yazoo の解説を信じれば、ヒザの上に水平に寝かせた National Steel Guitar "Tri-Plate" を使用していたと思われます。

この曲の艶っぽさ(?)っての、案外、そのコード進行にあるのかもしれませんね。
G オープンだからキーが「 G 」であるのは当然として(そ!それがヴェスタポルのオープン D や E を使う Elmore や Hound Dog といっちゃん違うとこで、ヴェスタポルではスライディング・「アップ」してそのキーのコードになるのがフツーなんで、キーの制約はあまり無いんじゃないかな)、面白いのは第10小節目、D から D#→D というこの動きが実にヨいのですよ。

ワリとマイナー系のスロー・ブルースなんかでこの「半音上げ」使われてるんですが、こんな曲調ので使うのもまたいいもんです。

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