Cleo's Back

Jr. Walker & the All Stars


2004-10-26 TUE.


大ヒットだった Shotgun に続くニ、三匹目のドジョウ狙いの「似たよな」路線(ワン・コードだったり、構成が似ていたり)からちょっと一歩下がった(あるいは寄り道した、かな?)感のある 12 小節のクールなブルース進行のナンバーでございます。

特徴的な Willie Woods のギターのリフが淡々と進む中、James Graves( 1967 年に路上での事故で死亡しています)のライド・シンバル(チョー控えめ)とタムを散らして、アクセントとなるリム・ショットを効果的に使ったドラムもまた、バタつかないソリッドなもので、その上にこれまた丸いトーンで始まる Victor Thomas( Fred Patton かもしんない・・・)のハモンドが滑り込んで、独特のバック・グラウンドを作り出します。
その空間で最初に踊るのはさほど派手ではないけれど、テーマを提示する Jr. Walker のサックス。ここらあたりは、そのブローもケッコー控えめ。
変わって(たぶん) Victor Thomas のハモンドがトーンを一段と鋭くしてソロをとってゆきます。
続いて、ギターのソロ。なかなかクリアーでいい音してるじゃあないの!なんだか、この曲ってギターのためにあるよな曲だなあ⋯と思ったら、それもそのハズ、この曲を書いたのは Junior Walker の学生時代からの友人でもある、その Willie Woods なのよね〜。

そして、そのままじゃ面白くない、ってんで Junior Walker が逆襲し(?)その曲を彼自身と Harvey Fuqua でアレンジしちゃった(たぶん、ね。だからクレジットも Dewalt - Woods - Fuqua になってます)Cleo's Mood って曲もあるのでございます。
ま、もしかすっと、一般大衆(?)にはそっちのほーがウケたかもしれませんが、やはりこの オリジナルはコンセプトが明快で、スッキリしてていいですねえ。
どうも Mood のほうはドラムもありきたりになっちゃってキンパクカンがございません。もっともダンス・フロアなどでは、耳触りが良くて抵抗が無いからいいのだ、と言うことなのでしょうが。

そして、もひとつの違いってえと、Mood のほーは、どーも、ベースが Berry Gordy Jr. と Lawrence Horn のさしがねで、James Jamerson(だけじゃなさそ?)が加えらえてるんじゃないか?って気がするとこでしょか。
Back のほーではたぶんハモンドのベース鍵盤じゃないか、ってえ音の動きや切れ方が見られるよな気がするのに対し、Mood ではキーボードのリズムとは独立したタイムでベース音が動いているよな気がするんですよ。
ま、気がするだけなんで、断言は出来ませんけど(ライナーでも触れてないし・・・)。

この後、すかさんからご連絡をいただき、チャート・インした時点では Back が先ですが、リリース日時では逆に Mood ( 1962 年、Back は 1965 年の 7 月。そして、そのヒットを受けて同年12月に Mood を再発売し、それがチャート・インしています ) が先であり、その前後関係は「逆」ではないのか?とのご指摘をいただきました。
ただし、肝腎の Cleo's Back の録音時日がさだかでないため、どちらにしても決定的とは言えないかもしれません。

この日記では、単に作者のクレジットからのみ、(つまり、先に三人の共作の Mood があったとしたら、Willie Woods ひとりが自分名義でモロそっくりな曲を録音するのに、残る二人がなにもクレームをつけなかった、とは信じ難い、と思ったからなのですが)単純に Back が先、と推理しております。
しかし、もしかすると事実はまったく逆、とゆう可能性もあります。

どなたか、Cleo's Back の「正確な」録音日時が判明する資料の所在をご存知でしたら、ゼヒ教えてください。それまではこの日記の記述も(「疑問符つき」ながら)このままにさせていただきます。

ところで Indiana 州の South Bend で学生時代を過ごしているようですが、そこで、彼がサックスに触れるようになったきっかけについて、前回は書いておりませんでしたので、そこらをちょっと。

彼は George Mason という男と知りあって、その家に遊びに行ったりしていたようですが、そこでサックスを「発見」したようです。
Mason のところにはテナーとアルトの二本があったようで、セッションが行われる毎週日曜日に遊びに行っているうちに、他に誰も来なかった日があって(たびたび警察に騒音の苦情が原因で解散を命じられていたせいもあったのでしょうが)、余っていたサックスを試しに吹いてみたのが「すべての」始まりだったようです。
George Mason から吹き方を教わっているうちに、どうやら「やり過ぎて」しまったらしく、次に訪ねた時にはサックスを隠されてしまったそうで、それが Mason の家を訪ねた最後となったのでございました。

結局、彼の自分の最初のサックスは、以前は演奏者だったものの、リタイヤしていたシカゴ帰りの叔父さんが、いまはもう使っていないから、と提供してくれたものでした。
そのサックスを持って、さっそく South Bend のあちこちで演奏し始め、さらには Illinois Jacquet や Arnett Cobb、Buddy Tate などの演奏も目にして、彼のスタイルを熟成させていったのでした。
やがて、叔父さんから貰ったサックスでは飽き足りなくなった彼は Rosenbaum の質屋で、もっといいものに交換しようとしたようですが、どうやら前の持ち主のクセがついていて、使えなかったらしいのです。
そこで彼の母がなんとかお金を工面してくれて Elkhart(管楽器の店)に連れて行き、好きなのを選びなさい、と言ってくれたのでした。
彼の選んだ Selmar の Mark 6 は 500ドルもしましたが、母は毎週の週給をあてる分割払いで話をまとめてくれたのです。
このサックスは数々の Motown でのヒットを生み出し、やがて彼の自宅に飾られていたそうです。

この投稿を再録するにあたり、アルバム Shotgun の実際の録音データを探してみたのですが、やはり(?)みつかりませんでした。

ちゅうのは、アルバムには Cleo’s Mood も Cleo’s Back も一緒に収録されております。
その二曲の実際の録音日時は接近してる可能性がある???
さらにメンド〜なことに Cleo’s Mood のシングル盤は二種類あるらしく、カップリング曲も違ってるんですねえ。

最初に出た 1962 年の EP ってのがアルバムの録音からの抽出ではなく、全く別の、アルバム録音前のヴァージョンだった(?)とゆう可能性もあるのかもしれません。
そこらはもうちょっと詳細な資料が出てこないことにはなんとも言えませんね。
なまじヒットした Shotgun ばかりに光が当たってるせいか、それ以外のアルバム収録曲については(いまのところ)詳細な記述ってのに出会っておりません。

でも、なんかのきっかけで出会うかもしれないんですけどね。
いまのところはどっちにしても確信が持てない、ってままでございます。

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