High Heel Sneakers

Magic Sam


2004-10-31 SUN.


なんだってそうでしょうが、どうも人間ってやつ、ついつい「先入観」ってものを持ちがちなようでして、それが時には「思ったほどじゃなかった」なんて失望の原因になったり、あるいは逆に、「意外といいじゃん!」てなことになって、まっさらな状態で聴いたのとは違うバイアスがかかっちゃって、ブルースマンの作品の評価をけっこう左右しちゃう可能性があるように思います。

ワタシにとって High Heel Sneakers というと、いっちゃん最初に触れた Buddy Guy at 郵便貯金ホールでしたねえ。
そこでの演奏の印象がとっても強くて、あのファンキーさにシビれたものでございました。

それだけに、この曲には、ややファットでインテンシティのあるギターと、ハードにリフを刻むサイド・ギターっちゅうイメージが「刻み込まれて」おったみたいですねえ。

しかるに、この 1964 年 2 月11日に Chicago の IRC スタジオで録音された Magic Sam の High Heel Sneakers を聴いたときは⋯
正直に言いますと、思わずズっこけてしまったのでございますよ。
え〜?ナニこれ〜!って。
まずはイントロのギター。無音の空間に侵入してくる(?)めっちゃサステインの無い、ペチョンペチョンな安っぽい音もさることながら、そのトボけたフレーズ!
あのアン・アーバーの「熱」や、High Heel Sneakers というナンバーに対して持っていた先入観から期待してた耳には、まさに「逆のイミで」ショックでした。

あ、ワタシの場合ですと、まったく違う曲でありながら、そのリズム・パターンが共通してる Hound Dog Taylor の Give Me Back My Wig の記憶が大きく影響を与えているのかもしれません。
やっぱ、あのくらいのゲンキは欲しいよねー。っちゅう根拠の無いイメージが、この Magic Sam の High Heel Sneakers を初めて聴いたときに感じた大きな「落差」の原因の半分くらいにはなっていそうです。

そのショック(?)から立ち直って、ああ、こんなのもいいなあ⋯と思えるようになるまでにかなりの年月を必要としたのでございますよ。

最近では、このシンプルさ ─ いわば最小限のエレメントだけで構成したようなこのトラックの身軽さや、独特の味を楽しめるようになってまいりました。
なんて殊勝っぽいことを言ってますが、自分じゃ、とてもこんな演奏はできませんけどね。

やはり自分でやるとしたら、ベキバキとゲンキのいいベースとタイトなドラム、ファンキーなハモンドにややヘヴィなサイド・ギターのリフを積み重ねて、その上でフィード・バックしそうなゲインぎりぎり、ファットなギターでカウンターつけて⋯

やはり、High Heel Sneakers はバリバリの弾きまくりで行きたいなあ。
え?聴いてるほうは「引きまくり」?ほっといてくれ!

こんなこと言うと笑われちゃうと思うけど、ど〜も Magic Sam って二種類あって(?)ワタシが好きなのは West Side Soul や Ann Arbor でのライヴの Magic Sam なんだよね。
で、ん〜⋯となるのが Mojo Workin' や Hoochie Coochie Man に、この High Heel Sneaker も、なのでございますよ。なんでダメなのか?はサッパ判りません。

もしかすると「それもまたひとつの偏見でしかない」のかもしれませんけどアン・アーバーでの Sweet Home Chicago みたく全速突破!てな勢いのある Magic Sam が好きなのかもしれません。
そう言えば彼のスローはあんまり印象に残ってないんですよ、切羽詰まったような You Don't Love Me や Mama, Talk To Your Daughter てな畳み掛けるよなブーギが「たまらん」のでございますが。
そ〜言えば、例のアール・フッカーのギター UNIVOX を借りて弾きまくった超高速ブーギなんかも「いかにも Magic Sam 」って感じするし(?)。

ケッキョクのとこ Cobra での彼にはあんまり好きな曲が無いってのも別な偏見があるのかもしれませんね、
ともかく Magic Sam に関しては好きな曲と興味ない曲、あるいは嫌いな曲、ってのがクッキリと別れちゃうんですねえ。

もっちろん、ワタクシにとって「どの曲も好き!」なんていうブルースマンはいないんですけど Magic Sam だけはその差がハゲしい!ってのは確かです。

あ、そうそう、面白いのは Buddy Guy ですね。アルバム I Was Walking Through The Wood だけは大っ嫌い!っちゅうヘンクツさ!ぎゃはははは〜。
ですからワタシだったら Buddy Guy ナニから聴いたらいいですかね?尋かれたらヴァンガードのアルバムをススメます。
そしてゼッタイ I Was Walking Through The Wood だけは買うな!と⋯アレって Buddy Guy をそんなに好きじゃねえヤツらが「これだったらまあいっか」などとぬかしくさってるんだから本気にするな!どころかそれススメたヤツとは縁を切れ!なんてそそのかしちゃうよ。
あんなアルバムをススメるよなヤツは Buddy Guy の良さなんか判りゃしねえのばっかだ!思ってますからね。

え?Magic Sam でコブラ原盤ススメるヒトってのもダメですかね、って?
ん〜、どうなんでしょ?そうゆう Magic Sam が好きってかたもいるんでしょうねえ⋯
ワタシにはわからないけど(ちゅうか、周りに出るマークよりコブラでの Magic Sam を激賞してるかたっての「見たことない」んですよ)⋯

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